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zoom RSS ま,“レールカー”と呼ぶとして…。〜2

<<   作成日時 : 2016/01/10 22:44   >>

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 前回に引き続き,軌道バスをば。
 今回取り上げるのは,カリフォルニア州中部,ヨセミテ国立公園の中に作られた鉄道,Hetch Hetchy Railroadにいた連中です。
 まずは,このアングルで描かれたペン画がナローゲージ・ガゼットの巻頭言“Robert's Ramblings”のタイトルバックに使われているのでご存知の方も多い筈の,19からいきましょう。(↓クリックで拡大)
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 この長さと高さと幅のバランスが何とも云えない加減で,思わず「絶妙!」と叫びたいくらい。
 これは,1919年にWhite Motor Companyの標準型トラックのシャシーを使い,サンフランシスコの市営電車“San Fransisco Municipal Railway”(トロリー好きの間では「ミューニ」の通称で呼ばれる)の職工長による設計を基に,サクラメントのA. Meister & Sonsに作らせた3/4トン,乗客12人乗り,と云うもの。下まわりの製造はミューニが行ないました。モノの本では“Track Bus/Ambulance”と書いてあります。Rail BusじゃなくTrack Busですが,日本語にしたら軌道バスで変りないんで,この際,気にしません。一時はAmbulance,つまり救急車として使われたそうです。
 あとでヘッチ・ヘッチィ鉄道(HHRR)については軽く紹介しますが,この鉄道はダム建設のための資材と人員輸送を担うべく建設されたものなので,工事につきものの怪我人(時には死人)を運んだワケです。
 写真は,鉄道が廃止となりレールの撤去がかなり進行した1949年8月にHetch Hetchy Junctionで撮られたもの。
 これが全レールカーの中で一番の俊足だったそうで,直線区間で時速50マイル(80キロ)を記録。また燃費がガロン16マイル(リッター6.8キロ)で,1931年当時としてはかなり経済的だったそうです。今じゃ考えられない数値ですけど,思えばアメ車=ガソリン喰いってのは後々でも普通だったから,この数値は充分によかったと云うことなんでしょうね。

 同じ19が現役末期の1948年撮影(場所Moccasin)と云うのがこちら。(↓クリックで拡大)
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 ドアの窓がスライド式なのが面白いんですが,製造当初の写真を見ると窓のない吹き抜け。今,JamestownのRailtownで復元保存されている19(前回のコメントでrailtruckさんが書かれてるコチラ)が,ほぼオリジナルのスタイル。
 写真からは判らないんですが,車体の下にターンテーブルが取付けてあります。横長の鋼製枠で,これをレールの上に下ろしてジャッキ・アップし,レールから浮き上がらせたところで人力で回転させて方向転換させます。この手のターンテーブルは,軌道自動車でもつけているのが結構あり,模型ではダミーになるでしょうが忘れちゃいけないディテールなので,覚えておくといいでしょう。ラージ・スケールなら,DCCのファンクションを利用して実際に動かすことができるかも。スライド窓も可能でしょう。
 それと,後輪(駆動輪)の前にサンドパイプが覗いているのが見えます。これは製造当初にはなかったんですが,実際に走らせてみたら必要だったので後から付け加えたんでしょう。
 製造当初の塗色は赤と黒で,レタリング(ヘラルド)とナンバーがゴールドだった由。
 これがHHRR最初の軌道バスですが,それ以前にはキャディラック,パッカード,ピアス・アローの軌道自動車が都合6台あったことを付け加えておきます。

 お次は20。White Track Bus,45h.p.エンジン,乗客23人乗り(運転手を入れると24人乗り),2トン,と資料にあるこれです。(↓クリックで拡大)
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 これは同じヨセミテのCamp CurryでDesmond Park Serviceがハイウェイ/観光バスとして走らせていたbWを買い取って,Groveland(HHRRのほぼ中間地点)の自社工場で鉄道用車輪に替え,カウ・キャッチャーをつけたもの。この時,bWの運転手をしていたFrank Orthも一緒に移籍してきたそうです。
 19と比べると乗客数がほぼ倍なので車長が長く,いかにもレールバスと云うスポーク車輪がそそります。でもこの車輪を模型にするのは大変そう。
 ちなみに,19も同じパターンの車輪をつけてました。それが最初の写真のpressed steelのに変ったのがいつなのかは判りませんが,どっちのスタイルにしても,模型化する時には何らかの妥協が必要でしょう。

 この写真は1937年にHetch Hetchy Junctionで撮られたものですが,先台車がターンテーブルに乗りかかってるのが見えます。後の木造建屋は,モノの本では「rail bus roundhouse」とあるので,シエラ鉄道との接続点にして起点のヘッチ・ヘッチィ・ジャンクションではピット型ターンテーブルで方向転換をしていたことと,ここが軌道バス基地だったのが判ります。
 奥に見えるボックスカーはシエラ鉄道の線路上に停まってます。ダム建設用資材のセメントを積んでいるそうで,ここからHHRRの蒸機に牽かれて乗り入れていくわけです。

 続いては21。(↓クリックで拡大)
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 これは見てお判りのように軌道バスではなくて軌道トラックで,最初の写真と同じ時に同じHetch Hetchy Junctionで撮られたもの。
 もっともこのスタイルは後年の改造で,当初は19に似た形のWhite/Meisterの軌道バス(1920〜21年製造)でした。乗客27人乗り,2トン。これを旅客輸送から外し,1924〜25年に客室部分をフラット・ベッドにして資材運搬用の軌道トラック(track truck)に仕立てたのです。平均時速は20マイル(32キロ)。
 trackもtruckも,カナ表記じゃトラックですけど,前者は鉄道の方では軌道/線路,スポーツでは陸上トラック競技の競争路で,後者は貨物自動車のトラック,鉄道の方では台車やトロッコ,と云うのはご案内の通り。

 さて,ドンジリに控ぇしは23でござんす。(↓クリックで拡大)
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 1946年にGrovelandで撮られた23も,White/Meisterの軌道バスで乗客24人乗り,2トン。
 ただしこれは新製ではなく,ナローゲージのNevada-California-Oregon Railwayから買った中古車で,HHRRの軌道バスでは車長が最も長い。馬面レールバス,とでも云いましょうか。この長〜いのがナローだったと云うのが,ナローゲージャーとしてはとても面白く,誰かに模型を作ってほしいナと思ってます。
 屋根上に手荷物を積めるようになってて,それがズレ落ちないように設けてある簡単な囲いは,駅馬車の流れみたいな気がします。模型を作る方には,是非とも荷物をいくつか載せていただきたいとお願いしておきます。

 トップで紹介した19は健在で喜ばしい限りですが,それ以外の20,21,23はどれも,この写真が撮られて間もなくスクラップとなりました。

 さてと,HHRRについて,ごくごく簡単に紹介しておきます。
 資料としたのはTed Wurm著「Yosemite's Hetch Hetchy Railroad San Francisco's Water and Power Project」(2000年・Stauffer Publishing)ですが,オリジナルは1973年・Howell-North Booksの「Hetch Hetchy and Its Dam Railroad」,1983年・Interurban Pressが同名で再版, 1990年・Trans Anglo Booksが同名で再々版に続いての改訂再々々版。
 書名から想像できるように,HHRRはサンフランシスコに水を供給し電力を起こすプロジェクトのためにダムを建設する目的で設立された鉄道で,その主体はサンフランシスコ市。なので19の最終製造を市営電車のミューニが行なったのは当然だったんです。
 サンフランシスコは1848年のゴールド・ラッシュで一躍発展した町で,西海岸で最も人口の多い街になりました(現在はロサンジェルスが最大になってます)。1906年,大地震とそれに伴う火災でサンフランシスコは灰燼に帰したわけですが,火災が拡大した背景には水の供給が充分でなかったことがあったのです。そのため市では水を大量に手に入れる必要性を痛感,様々な調査の結果,市のほぼ真東にあるヘッチ・ヘッチィ・ヴァリィに貯水池とダムを作り,発電所を建設して,ライフラインに必須の水と電力を得る方針を立てました。
 市から150マイル(240キロ)離れたシエラ・ネヴァダ山中から水を引くためのこのプロジェクトは,10億ドルの資金と20年の歳月を要し,1934年から水と電力をたっぷり得られるようになったのです。
 HHRRはサンフランシスコ市によって,シエラ鉄道の起点・オークデイルから26マイル(42キロ)の地点(後にヘッチ・ヘッチィ・ジャンクションと命名)を起点とし,東に68マイル(109キロ)のクラス3のコモン・キャリア路線を敷設しました。平均勾配4%余,運行期間は1917年から1949年まで。
 所有していた車輛は,蒸気機関車はハイスラー2輌,ミカド(2-8-2)2輌,プレイリー(2-6-2)1輌,シェイ1輌。客車は5輌。レールカー/レールバス12輌。ガソリン機関車3輌…etc.となってます。

 上記参考資料には,工事補助用のナローゲージ線,トンネル(送水管用)建設のための2フィート軌道,マリオン・ショヴェルやディギング用機器,インクラインなどなど,その方面が好きな方が喜ぶ写真なんかも入っているので,興味を持たれたら買って読んでみることをお薦めします。
 ちなみにアメリカの古書サイトでauthor「Ted Wurm」でサーチしてみたら,4,000円程度から,でした。

 と,今回はここまで。次は…,まだ決めてませんが鉄道車輛っぽいのにしましょうか。

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コメント(9件)

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ヘッチ・ヘッチィはおばさんの書いたSierra Railwayで知りました。同書には19号がジャクソンヴィル橋を渡る写真が載っていますね。
因みにこの本は洋書購入2冊
railtruck
2016/01/11 06:07
すみません。続きです。
因みにこの本は洋書購入2冊目で1冊目はThe
Twilight of Steam Locomotivesでした。
railtruck
2016/01/11 06:14
railtruckさん

シエラの本もいいですね。カヴァーのぼろい古書を格安で買いました。これには30インチゲージの,Empire City Railwayの写真やYosemite Short Lineの話が出てますね。YSLについてはこれで概要が判りました。

The Twilight of Steam Locomotivesは持ってましたが引越しに際して処分しちゃいました。

手に入れた時にパラパラッと見ただけでそれっきり,って本が結構あったんですけど,そう云う本ってまずもう開くことがないんですよね。だもんで,アッサリとポイッ。
時間が充分あったら,リストアップして欲しい方に差し上げられたと思うんですが,そうもいきませんでした。
Taddie
2016/01/11 13:20
日本型が好きな人にはペアーハンズから製品化されてるT型フォード自動車の円太郎バスを改造した磐城炭礦軌道の自動軌動車がいいかも。
メリケンナローファン
2016/01/11 14:56
メリケンナローファンさん

あ,これはそのままアメリカ物になるかも。モーターが腰板までの高さで横から見えないのもイイですね。
走らせることを考えるとHHRRのみたいな1軸駆動は模型じゃツラいですから,2軸車がイイのは確か。
Taddie
2016/01/11 15:56
ヲヲ!! あのイラストはHetch Hetchy Railroadのでしたか…。
Nos. 19, 20はサイドに雨よけの窓とかキャンバスのカーテン(?)が付いてますが、No. 23には何もないのは廃車後(と写真から判断)取り払われたのでしょうかね?

で、このNo. 23の屋根上ですが、ここに荷物を積むと車体が揺れた時に落っこちそうなんですが、果たしてこんな低い囲いで大丈夫だったんでしょうか? ちょっと不安…。

しかし、”バス”に関しては車体の裾が絞られてるのが古い乗用車的でデザイン的にGoodと思ってます。
これをストレートにしちゃうと味気ない気がしますねぇ。
Junior
2016/01/19 11:58
Junior

23の写真はHetch Hetcyの本には1枚しか載ってないのですが,客を満載している1922年撮影のそれでは,窓まわりはまったくのオープンでカーテンはありません。屋根上には荷物が3個載ってます。
これは客輸送が蒸機牽引に変った1920年代半ばには休車扱いになって留置され続けたので,お目にかけた写真は廃車状態って云っていいでしょうが,現役当時の姿と比べて違うのは,ラジエーター前に立っていた2個のヘッドライトがなくなっているのと,カウキャッチャーが凹んでるくらいですから,ほぼこのスタイルで走っていたと思っていいでしょうね。

車体裾の絞りは,我々にはコッチでないと面白くない!ですよね。マ,作ること考えると面倒が先に立ちますけど。
Taddie
2016/01/20 00:09
21号の改造前の姿のようです。Pinterestのサイトでは大きなサイズの同じ画像では車体左前のカーテン上の黒い部分に21の数字が書かれているので間違いないかと。
https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/33/0c/e0/330ce0c3524cf2d02bdf23f2a904ea70.jpg
railtruck
2016/01/20 07:42
railtruckさん

そうです,これが21のオリジナルです。
本には何枚かこの時代の写真が出てます。

このあたりのリサーチは,さすがrailtruckさんですね。
Taddie
2016/01/20 22:28

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