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zoom RSS ま,“レールカー”と呼ぶとして…。〜3

<<   作成日時 : 2016/01/16 21:50   >>

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 前回紹介した軌道バスは,自動車メーカーが作ったバス車体を載せた文字通りのレールバスでしたが,今回は,車体は自社工場か地元の町工場あたりで作ったようなレールカーをいくつかご覧いただきましょう。

 アメリカと云っても広うござんす。合衆国ばかりがアメリカじゃァござんせん。
 と云うわけで,中米=Central Americaのエルサルヴァドルのレールカー,17なるものをご覧ください。(↓クリックで拡大)
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 丸く突き出た5枚窓の妻面,前面にデカデカとつけたナンバー,装飾性豊かなヘラルド,その下には愛称の“Tacuscalco”,と個性の主張が何とも嬉しくなるスタイルじゃありませんか!
 一見鋼製車体みたいですが,どうも木造車体に鋼板を張った,世に云う“偽スティール”じゃないかしらん。
 下まわりを見ると,右側に車輪が見えないので,廃車後に何かの建物代わりに据え置かれた“ダルマ”みたいです。が,地べたに置かず,現役みたいに車体が持ち上がった位置にあるので,ラジエーター・グリルのある前(左側)の方には車輪(2軸台車と踏んでます)がついている気がします。

 同じ鉄道の20も見てください。(↓クリックで拡大)
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 長さと屋根の深さに違いはありますが,まず17と同じところで作られたと信じられる形。こっちが木造車体なので,17を“偽スティール”じゃないかと書いたのを頷けてもらえるんじゃないかと思うんですが…。
 窓にサッシがないんで,この写真が撮られた時(1970年6月6日・場所はサンサルヴァドール・17も同じ)には廃車になっていたと考えるの妥当でしょう。20は“Cuisnahuat”と命名されてます。
 ヘラルドのFESって云うのは,Ferrocarril de El Salvador(エルサルヴァドル鉄道・スペイン語)のイニシャル。ウィキペディアによれば,エルサルヴァドルの鉄道は現在は壊滅状態のようですが,かつては550キロを超す路線網があったそうで,その大半が3フィートゲージだったと云いますから,エルサルヴァドルの標準軌間は3フィートだったと云うことになりますね。ウン,よしよし。
 FESは国有化された後の社名で,もう一つの国有鉄道だった,これも3フィート・ナロー,いやここではスタンダードゲージのIRCA(International Railway of Central America)と統合されて,この写真が撮られた5年後に国営鉄道になったそうです。ちなみに,その両鉄道の車輛の写真もいくらか手許にありますので,機会があったら紹介しましょうか。期待する方は,…マァおいでじゃないでしょうが。
 それにつけても,この2輌のカウキャッチャーのヘロヘロ加減はどうでしょう。あ,こう云うの,決して嫌いじゃありません。これを忠実に模型化したら,工作下手って烙印押されそうですが…。

 さて,合衆国に戻って,ギャロッピング・グースの国(ステイト),コロラドにはウ〜ンと唸るのがいました。(↓クリックで拡大)
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 スタンダードゲージ,San Louis Valley Southern RailwayのM-300。唸ったのは,勿論カッコいいからじゃなくてその反対。
 何でしょうか,この格好。トレーラー・ハウスとかキャンピングカーとかに似てなくもないけど,如何に実用一点張りを得意技にするメリケン国でも,随分だなァ,このスタイル。三歳の童子のポンチ絵から抜け出たような…と云ったら失礼か。
 1924年にデンヴァーのWinter-Weissが作ったと云う話で,最初はM-3だったのが,デフレってこたァないでしょうが二桁増やしたナンバーになったモーターカーです。
 ちょっと信じられないけど,な,な,何と,これが今も保存されている! オクラホマの鉄道博物館にあると云うので,もし興味を持たれたら,こちらのサイトを見てみてくださいませ。

 同じくスタンダードゲージのボギー・レールカーで,顔つきがヨーロッパの機関車に似てるのもありました。(↓クリックで拡大)
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 South Georgia RailroadのPassenger Rail Car M-100です。
 この鉄道はジョージア州とフロリダ州の2州を股にかけていたそうで,写真は1955年6月にジョージア州Adelで撮られたもの。ミシガン州のカラマズーにあったKalamazoo Railway Supply Company(1901年に改称される前はThe Kalamazoo Railroad Velocipede and Car Company)が1940年6月にシヴォレーのエンジンを使って製造した26人乗り。この写真が撮られた翌年に廃車されました。
 SGRCoのイニシャルを図案化したヘラルドはなかなか素敵です。ライニングはペンシィのGG1あたりの影響でしょうか。
 シールドビームと思われるオデコライトと,おヘソライトと云うにはちょっと下がり過ぎたので“ヘソ下三寸ライト”とでも呼びたい2つのライトが面白いところ。帯板を組んだカウキャッチャーのヘタリ具合も味があります。
 しかし,この小径車輪じゃスピードは出なかったでしょうね。車輪の小ささがナローっぽい,と云うと,すぐにナローを持ち出すんだから…と叱責されそうですね。

 最後は,前回紹介したヘッチ・ヘッチィのレールバスと同じMeisterが作った,スタイルは全く違うコチラ。(↓クリックで拡大)
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 幕板(letterboard)にあるように,これはLong-Bellってところのです。
 ロング-ベルとは,Long-Bell Lumber Co.のことで,いくつかの州で伐採/製材を行なっていた大きな会社です。このレールカーがいたのは北部カリフォルニアの路線ですが,新造ではなく中古品。
 元は,サンフランシスコからサンタクルスまで太平洋沿岸を走る鉄道として建設されたOcean Shore Railroadに,マイスターが1917年に製造して納めた同形2輌(61と62)のうちの61。
 この鉄道は1905年に,北のサンフランシスコから南に向けてと,南のサンタクルスから北に向かっての両面作戦で建設が開始されたんですが,翌年,あの大地震で被害を受けて工事が遅れ,結局は南北の路線はつながらなかったと云います。サンフランシスコ市内は電化してあったけど基本は蒸気運転でした。1918年2月18日に蒸機列車にとって代わって運行を開始したのが2輌のレールカーでしたが,その4年後の1921年に北部分が廃止(南側は数年後に廃止)となり,不要になった61を引き取ったのがロング-ベルだった,と云うワケ。
 ちなみに,シスコ市内の電化路線は市営電車のミューニの一部になったそうです。
 ロング-ベルでナンバーが振り当てられたのかどうかは判らないんですが,ロギングの専用鉄道なら無番号でも不思議じゃないでしょう。
 後述する資料によれば,車重11トン,座席数31,エンジンはBuda SSU 60hp,車長40フィート4インチ,後部はオープンの展望席,とあります。これの試運転はNorthwestern Pacificとヘッチ・ヘッチィの両鉄道で行なわれたとも書いてあるので,前回紹介のレールバスともつながり(と云うか,引っ掛かり)があるんですね。
 ロング-ベルでは元あった窓2枚分に,ご覧のように味気のない荷物ドアを設ける改造をしていますが,彼のマッキーン・カーに倣ったような尖った前面(edge-shaped noseと資料にはあるがknife-nosed frontって云い方もする)と,屋根上に鎮座ましますベルはそのまま残っていて,そそられる格好なのは確か。もっとも模型にするなら,個人的にはオリジナルの方を選びますが。

 ところで,ネットを漁っていたら,マイスターについてこんな記載があるのを見つけました。
 “In March of that year (1923) they received an order for 12 gasoline-powered interurban railroad cars from the Japanese government, although it’s not clear if the vehicles were built.”
 国鉄/鉄道省で輸入ガソリンカーがあったなんて話は,日本型には詳しくないですけど,聞いたことがないので,オーダーはあったものの作られなかったと云うことでしょうね。もっとも当時(大正12年)は外地にも鉄道があったので,そっち向けと考えられなくもないですが,果たしてどうでしょうか。
 しかし,そんな記録が彼の地に残っているなんて,ネット社会になった今でなければ知りようもなかったですねェ。

 と,今回はここまでですが,資料にした本について触れてからオヒラキとしましょう。

 このネタの初回のコメントにrailtruckさんが書かれた,Interurban Without Wiresを含む3冊を参考にしてます。
 これを出したInterurban Pressはカリフォルニアの出版社で,パシフィック・エレクトリックに関する膨大にして詳細を究めた本を出してくれた(それ以外の電気鉄道のも多々あり),好き者にとっては足を向けて眠れないくらいの存在です。元は,先の大戦中の1943年にアイラ・スウェット(Ira Swett)さんが始めたニューズレー“Interurbans”で,翌年には特集的に一つの鉄道や事柄についてまとめた“Interurban Special(IS)”って云うのを始めました。
 そのISの66が“Interurban Without Wires〜The Rail Motorcars in the United States”。(↓クリックで拡大)
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 これはアメリカ国内のレール・モーターカーをメーカーごとに分類してまとめたもので,railtruckさんが指摘されたようにsteam railcarも取り上げられています。ただ今回紹介した中の,不細工なコロラドのを作ったと云うWinter-Weissは出てこないので,調査から漏れたのか,或いは鉄道車輛を作るメーカーと考えられていなかったのか,と考えるしかないのかも。
 この本,古書サイトによれば,一番安いので4,000円くらいから。安いのは中に書き込みがあったり状態がちょっとよくないようですが,見る(読む)分には差支えないでしょう。
 著者はEdmund Keiltyさんと云う,ロサンジェルスでTroxel Modelsと云うロスのパイオニーア的模型屋を営んでいた方。カヴァー裏の著者紹介の写真には,執筆する机の上に日本製と思われるブラスモデルのガスエレやマッキーン・カーが写ってます。この方の30年にわたる資料蒐集の成果が1979年に発行したこの本。
 ウチにあるのは1987年の再版のですが,これには正誤表が2ページあるので,買うならこちらがお薦めなんだけど,古書サイトのはどれも初版…。

 続いて1982年に出たのが,IS-77,“Doodlebug Country〜The Rail Motorcar on the Class 1 railroads of the United States”。(↓クリックで拡大)
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 こちらは書名が示すように,クラス1鉄道(つまりは大鉄道)にあったレール・モーターカーを鉄道ごとにまとめたもので,ドゥードゥルバグと云えばガス・エレクトリックの代名詞なのでこれが圧倒的に多いのは致し方ないですが,BuddのRDCやゼファー系列のも出てきます。
 カヴァーに記されている値段は$28.95。古書だと5,000円以上,新品同様のだと2万円以上。

 三部作の掉尾を飾るのが,IS-99の“The Short Line Doodlbug〜Galloping Geese and Other Railcritters”。1988年刊。(↓クリックで拡大)
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 これでは州順に鉄道ごとの,クラス1以外の鉄道にいたレールカーがまとめてあります。結構珍しい写真もあって,ナローや小型のが好きな向きにウケること間違いなし。
 カヴァーには$32.95とありますが,現在の古書価格を見てみると,安くても7,000円台,お高いのは4万以上! 以前は,この三部作では古いのから順に値が高かったんですが,今はどうやらこれが一番の高値になってるようで,なんだか不思議な気がします。

 ところで,すでにお気付きの方も多いと思いますが,この三部作はISのナンバーがどれもゾロ目。最後のが99になったのは,ずっと前(1983年)に88が埋まったからですが,それでもゾロ目で揃えた心意気には拍手,拍手。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
素晴らしい個性派揃いで堪らないっす、WithoutWireでもこれならOKです!
どいつもらこいつも
2016/01/18 00:59
どいつらもこいつもさん,

お気に召していただけて何よりです。
今後もそういうのをお目にかかられるとイイんですけど。
Taddie
2016/01/18 22:03
San Louis Valley Southernのを元に、キャンピング・レイルカーっちゅうのも出来そうですねぇ。
現にキャンピング用の客車てのがありましたから。
英国国鉄所有の客車の写真を見た事があります。

で、一番下の本(The Short Line〜)の表紙のレイルカーですけど・・・気のせいかも知れませんが・・・前輪が線路に沿ってステアリングしてませんか?
Junior
2016/01/19 01:26
Junior

Camping vanですか? エゲレスもやりますねェ。

表紙のレールカーはPanama Traction Co.ってところので,パナマと云うもののあったのはペンシルベニア州です。
この本の中に写真が出ていて,そのキャプションや一覧表では,後にYoungsville & Sugar Grove Street Railwayって書いてありますが,それがあったWarren Countyのサイトには,1902年設立のY&SGが1909年にWarren County Tractionに変り,1916年にパナマ・トラクションに,って書いてあります。絵のレールカーは1919年のWhite製ですから,パマナ・トラクション時代に買ったものと考えるのがいいですね。

その写真を見ても,カヴァーの絵を見ても,前輪は車軸で左右輪が結ばれていなくて,単にタイヤをフランジ付鉄道用車輪に替えただけなんで,steering wheelで前輪を曲げるようになってたみたい。
つまり,単にバスの車輪を4つ取り換えただけ,って云う至って簡易なレールバスですね。
11マイル(18キロ弱)の路線だったんで,これでもよかったんだろうと,考えるしかないですナ。
Taddie
2016/01/19 23:37

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